超格安ストロボTT560を高機能ストロボ並みに使用可能とする方法

2025年12月の価格改訂によって若干値上がりしてしまったが、それでもNEEWEER TT560は『お手頃価格なフラッシュストロボ』だと言える。聞くところによるとガイドナンバー60のGODOX T600と同じコンデンサーを使用しているということだ。
コンデンサーに電気を溜め込んで、一気に光に変えるのがストロボ発光原理だ。つまりTT560とTT600の出力(Ws)は互角だと言えるかもしれない。しかし両ストロボが単三電池四本で利用することを考えると、コンデンサー容量は大したことがないように思える。
事実、TT560を利用していると出力不足を痛感させられることがある。そこで今回はそんなTT560を、AD200のように充電式バッテリーで駆動するGODOX AD100やAD200のような高機能ストロボ並みに使用可能とする方法を紹介する。
パワー不足なTT560
まずはXでコスプレイヤーさんにアップして頂けた写真(Xへのリンク付き)。
コスプレイヤーさんからは喜んで頂けれたけれども、コスプレ写真家としては残念賞だ。現像なしの『撮って出し』であり、背景とコス衣装が同化してしまっている。そして何より、せっかく準備した髪が片側しか輝いていない。これは背面に設置したNEEWEER TT560(冒頭画像)の出力不足だ。コスプレイヤーさんの真後ろに設置すると、髪が光らなくなってしまう。
これがGODOX A100であれば、特に問題なく髪を輝かせることができる。AD100は500gを超えており、TT560は実測412g(単三バッテリー四本入り)に過ぎない。
ストロボ発光させるためのコンデンサー容量の差…… 高級ストロボと超格安ストロボの差が如実に浮き出てしまった一枚である。
パワー強化方法:絞り
まず最初のパワー強化方法は、当然ながら『絞り』となる。全方位に光を送るのと、その送り先を半分にするのでは状況が異なる。TT560には高級ストロボや純正ストロボと同様にバウンスカード(白い板)が装備されている。そのバウンスカードで、光の送り先を『絞る』のだ。

なんなら白い板の部分に反射用の鏡やアルミ箔を貼っても良い。ちなみにギザギザの透明プレートは光の届く距離や発光角度を制御する板であり、自分の場合は常時利用している。
話を戻すと、たとえば先ほどの写真は、天井へ向けてストロボを焚いて、そこから反射して来た光をレフ板で再反射させている。だからコスプレイヤーさんの後方へ送り出される光は『ムダ』に消費されている。屋外撮影でも基本的に同じだ。
実質的に発光パワーは2台分…… 2倍となる。
もちろん全方向への最大出力が必要な場合もあるが、それはスタジオ撮影でアンブレラやソフトボックスを使うような場合に限られる。最近のスタジオは充実しているので、貸出機材として用意されている。
だから大抵のケースでは撮影方法を工夫して、『絞り』を活用すれば超格安ストロボのTT560でもGODOX AD100のような出力を得ることができる。どこかのWebで見かけたけれども、条件によってはTT560がガイドナンバーを測定してみたら、56か65くらいだったという実験レポートがあった。
必要なところに必要な光量のストロボ光を届ければ良いので、別に実験しなくても「その通り」だと言える。
パワー強化方法:増強1
ただし幾ら工夫しても、絶対的なパワー差は存在する。GODOX AD100やAD200をフル発光させるような場面では、NEEWER TT560の出力では不足してしまう。
そんな場合は、「ストロボ一灯で不足するなら、二灯を使えば良いじゃない」である。

画像に写っているのは、ホットシューからの信号を分岐させる板だ。単なる伝達信号を、1本の配線から2本に分岐させるだけで良いから『誰でも作成可能』だと言える。
デュアルホットシュースプリッターという商品名称だった。GODOXのストロボならば無線機能内蔵なので、分岐配線は必要ない。NEEWER TT560は内蔵していないので、ワイヤレスフラッシュトリガー装置を使うことになる。その信号を分岐させるには、このような商品が必要となる。
GODOX AD100は約520で、TT560は2台分だと実測824gとなる。このくらいの重量ならば、ライトスタンド1台にTT560を2台搭載することが可能だ。
1台では無理でも、2台ならばパワーは本当に2倍となる。さすがに単三電池8本分のパワーは侮れない。
パワー強化方法:増強2
こちらは、おそらく大丈夫だとは思うけれども、コスプレ撮影の現場では実際に利用したことのない方法。

先程と同じくストロボを1台から2台に増強するのだけれども、2台目は1台目に黒マスキングテープで貼りつけてしまうという方法。「え、離れたままで大丈夫?」と思われるかもしれないけれども、特に問題はない。
TT560はスタジオ撮影で利用することも想定しているので、マニュアル(M)モード、スレーブモード(S1)、スレーブモード(S2)が利用可能となっている。そこでS1モードに設定して2台利用するという訳だ。
スレーブモードというのは1台を『マスター』モードにして、他の複数台のストロボを『サーバント』… ではなくて『スレーブ』モードにする。そうするとマスターの発光をスレーブたちが受光部分で受け取って、それをトリガにしてストロボ発光するという仕掛けだ。
実はストロボは予備発光/本番発光で2回発光しているので、どちらに合わせるかによってS1モードとS2モードが存在する。自分の場合はS1モードを利用している。
プロのスタジオ撮影現場では、場合によっては10台近くのストロボを同時発光させる。そのために無線デバイスを購入していたのでは、予算的にツラい。だから高級ストロボの多くには、M、S1、S2モードを設定する機能が組み込まれている。そんな機能が超格安ストロボではあるけれども、TT560に装備されているのだ。
まとめ:まずは経験値アップ
以上の通りで、初心者向けフラッシュストロボとして手軽に使えるNEEWER TT560だけれども、使い方を工夫できれば大活躍できる。最初から百点を取ろうとして中途半端なフラッシュストロボに手を出すよりも、まずはTT560を使いこなすことをお勧めしたい。
そうするとGODOX AD100やAD200の素晴らしさを理解して使いこなせるようになるし、自分にとって必要なストロボが何であるかもわかってくる。なにもわからないうちから中途半端な出費をするにはカメラ機材は高価過ぎると思う。
自分としては地道で時間もかかるけれども、一歩一歩、少しずつ経験値を蓄えていくことをお勧めしたい。
それでは今回は、この辺で。ではまた。
P.S.ついで (受信機2台版)
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記事作成:小野正樹







