育児・教育・岸田首相のコンプレックス政治 (湘南日記)

14歳の看板娘

今回は珍しく政治に関する話。

岸田総理大臣は、賃上げの一環として重視する個人のリスキリング=学び直しについて、産休や育休中の人が取り組むことを支援する考えを示した。これに関して賛否両論が巻き起こっている。

賛否両論が巻き起こるのは、好ましい話ではない。
そこでいちおう、政治学をかじったことのある者として解説をしておくことにしたい。
(物事をちゃんと調べて行動する習慣のないお嬢様が本日もドツボにハマったので、自省のネタとして記事化することにした)

発言の趣旨と狙い

まず文字通りに解釈すると、企業サイドとしては「なにをたわけたことを!」と言うことになる。別に誰もそんなことを要望していないのに、いきなりブチ上げて来た。

国内IT企業では、この方面で先頭を走っているサイボウズ社の青野社長が、さっとくコメントをしていた。

もっとなコメントである。
しかし岸田総理にも、実はこれにはちゃんとした背景がある。僕が「心の師」と仰ぐ、ニューヨーク大学ブルース・ブエノ・デ・メスキータ(B.D.M.)教授が解き明かしてくれる。
(翻訳がひどいというウワサもあり、念のために原書を読むことをオススメしたい)

発言の趣旨としては冒頭紹介の通り、「賃上げの一環として重視する個人のリスキリング=学び直しについて、産休や育休中の人が取り組むことを支援する」である。あくまでも本筋は賃上げとなる。

岸田総理に関する新聞/雑誌/評論家コメントを見ていると分かるように、基本的に岸田総理というのは自らの意思で積極的に動くことはない御方だ。しかしB.D.M.教授によると、政治というのは自らの権力基盤(ポジション)を “強く” かつ “安定” させようとする活動である。

そして岸田総理が現在の自民党総裁というポジションを得ているのは、単に政治ゲームでルールを上手く活用したという理由ではない。いつかの変人宰相とは異なり、彼の権力基盤を支える支持者たちの利益を最大化する道を邁進している。政治家の王道を突き進んでいるのだ。
だから時には支持者たちの期待に応えるべく、いきなり果断な判断や動きを見せることがある。

そして彼の場合、自民党内における権力基盤は強くない。そのために官公庁の支持を取り付け、権力基盤を補う傾向がある。それに僕が言うのも何だけれども、彼は政治家としては高学歴であり、官公庁に「昔からの知人」も多い。
良くも悪くも、官僚主導型の政治体制となっている。

その岸田総理が、「人への投資の支援を5年で1兆円に拡大する」と改めてコメントした。
ちなみに総理からコメントを引き出したのは、自民党・大家敏志参院議員である。もともとは金融・財務方面の議員さんだが、興味深いことに2022年からは “文部科学省日本ユネスコ国内委員会委員” となっている。

ここら辺で、ピンと来る人がいるだろうか。

つまり現在では仮説…… というよりは陰謀論の枠を出ないけれども、賃金を上げて税収を豊かにしたいという財務省的な思惑に乗っている。そして同時に、文科省の大学維持を支援したいとも考えている。
(天下り先の心配をする官僚に対して、教育の機会を提供するという、ささやかなメリットもあるかもしれない)

常識的に考えれば、産休や育休中に「学び直し」などやっている時間的な余裕はない。それに従来の安倍政権や菅政権が進めていた、保育施設の充実と低価格化で十分だろう。
その方が少子高齢化に歯止めをかけやすくなるし、学び直す時間を得ることも出来る。

何をするか分からない子供に神経を配りながら、高度な思考活動を実現するのは無理がある。
それに僕の周囲では、ここ数年で数名が産休・育休を取得しているけれども、誰も「学び直し」など希望していない。それよりも子供を保育園に預けて、早期復帰することを希望している。

つまり今回も岸田総理は財務省や文科省などの思惑と、それを大事にする議員たちの期待に応えるべく、「学び直し」を宣言したという図式になる。これは先に述べたように仮説に過ぎないけれども、今のところは矛盾はない。

企業側の視点

さて僕は企業の社員なので、そちら側からの視点で見ることになる。サイボウズの青野社長と同じである。

Twitterでは「最近は産休・育休中に学び直す人も出て来ている」というコメントを見かけたけれども、これは教育関係者のコメントである。そりゃまあ、一兆円の投資をして貰う側としては嬉しいだろう。

ちなみに企業側の視点としては、「は?」である。そもそも企業は賃上げをするために社員を採用していない。売上や利益を確保するために人を採用しており、もちろん賃上げに断固反対などという考えは毛頭ないけれども、まずは企業強化のために社員教育を考えている。

たまたま先週のセミナーで紹介された話だけれども、日本郵船などでは候補者を選抜して教育実施している。これはどこの大手企業でもやっており、僕も海外業務研修生に選抜された経験がある。

もちろん社員が「学び直す」ことは一般論としては応援するけれども、企業経営の視点でやりたいことは「産休・育休者の学び直し」などではない。だから岸田総理のコメントを額面通りに受け取ると、「は?」となる。

もちろん最近では欧米でも社員の再教育には力を注ぐようになっているけれども、それでも企業は企業である。あくまで売上と利益が第一目標となる。必要に応じて、社員向けに保育園なども確保している。
ちなみに僕の会社でも、労働組合が保育園を運営している。組合に所属していない管理職でも、子供を預けることが出来る。

企業としては政府のやることには口出ししたくはないけれども、自分たちが納める法人税が使われる訳である。ただでさえ落ち込みつつある企業競争力を維持するために、出来るだけ有効な施策を考案&推進してほしいところだ。

いざとなったら日本から拠点を移すことなども考えることになるが、あまりそういうことはやりたくない。昔は高校時代の友だちが外務省に就職したりしていたけれども、一体最近はどうなっているのかと不思議に思えてくるほどだ。
(なお外務省の友人は二十五歳の時に米国研修先で亡くなってしまった。だから僕には、霞が関の動きは全く分からない)

まとめ

岸田総理の「学び直し」についてのコメントは、以上の通りである。五年で一兆円であれば騒ぐほどのことではないけれども、企業で働く身としては、トヨタの動向が気になるところだったりする。

そして以上は仮説に過ぎないけれども、政治という社会的な存在ではあっても、ミクロレベルに分解していくと自然科学の取り扱い対象となる。人間の考えることや行動にしても、必ず背景や狙いといったものが存在するのだ。

我が家のお嬢様は世の中の仕組みを把握しきれておらず、本日ははるばる神奈川県大船の港南台にあるファミレスまでクリアファイル・プレゼントを狙って出かけて、まったく収穫を得られずに帰って来た。

イベント主催側としてはクリアファイルを有効活用したいから、「期間を決めて配布」はやらないのだ。一定量しか確保せず、「xx月yy日から配布開始。在庫がなくなり次第終了」となる。
その方が、お嬢様のように「カモネギ」が労せずしてやって来て、ファミレスで食事をしてくれる。

そういった社会の構図を、早く理解できるようになってくれると嬉しい。
それから父親はトヨタのように日本を捨てるというか、もとから僕の給料は9割以上が海外からの売上送金だ。
したがってお嬢様の体組織も、9割以上が海外売上で構成されている。
関係ないけれども、英語も苦手意識を持たずに頑張って勉強しておいて欲しいところだったりする。

それでは今回は、この辺で。わざわざここまでお読み頂き、ありがとうございました。
ではまた。

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記事作成:小野谷静