続・三本のフランクフルト物語 (第一部:実家訪問編)

老人ホームの桜

我が娘による前話の感想は、「面白かったけど、話のネタが良かったから」との評価だった。

違うんだ、娘よ。物語はどこにでも存在している。ぼくのようにアンテナを立てて生きている者には、あちこちに話のネタが転がっているんだ。

作文に打ち負かさせている娘よ、立つんだ。格の違いってヤツを見せてやるっ!」と、某 “鋼の錬金術師” のエドワード・エルリック (兄) のように、負けず嫌いの父ちゃんは、予告通りに横浜野田岩の訪問レポートでストーリーを書き綴ろうとするのだった。

パート1:カーシェアリング

まずこれだけでも1ストーリーを語れてしまうのが、久しぶりの実家訪問だ。特に今回は久しぶりに、C-HRというハイブリッド車をカーシェアリングしている。

CH-Rをカーシェアリング

と、書くと、「父親の墓参りを兼ねて、珍しく自動車をカーシェアリングで借りることにしたな」と察する方がいるかもしれない。残念、今回は墓参りする予定はない。
ぼくの心の中にいる父は、ぼくに向かって語りかけるのだ。「静、お前には俺の墓参りなんかしている余裕はあるのか。そんなことより、やるべきことがあるだろう。来て貰っては迷惑千万だ」と。
相変わらず、自分にも他人にも厳しい父親なのである。
しかし分かっている。もしも孫娘を連れて来たら、同じことを繰り返して言いながら、実は彼の見えない尻尾が犬のようにパタパタと振れるのだ。つまり、今はタイミングじゃない。Mikanお嬢様も連れて来れる時期が到来したら、その時に墓参りしてくれということなんだ。

[chat face=”mikan2.jpg” name=”Mikanお嬢様” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=”maru”]じいちゃんって、そういう感じの人だよねー[/chat]

今回CH-Rを話題にしたのは、ちゃんと車の運転練習をしていることをアピールするためなのだ。ぼくのドライビング・テクニックに関する家族の信頼度は、大変に低い。だから機会がある時に練習しておかないと、車に乗ってくれない。
我が家は東名高速道路が使えて、国道16号線や保土ヶ谷パイパスへのアクセスも良い。車乗りには理想的な環境だ。
しかし運転できない家族は、高速道路の方が一般道路よりも安全に運転できるということが分からない。これは理屈を説明しても本能的に恐がるので、コツコツと実績を積み重ねていくしかない。

[chat face=”mikan2.jpg” name=”Mikanお嬢様” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=”maru”]恐いものは恐いっ![/chat]

と、いうことで、桜が満開の光景の中を、ハンドルを目一杯ぎゅっと強く握りしめ、久しぶりの運転に極限まで緊張しながらCH-Rを駆るのだった。もちろん空いている時間帯なので、後続車はない。だから自転車だったらば “スピード感に満ちて颯爽” といえる時速30kmで走る。
しかし “颯爽” とした速度でCH-Rを走らせても、わずか数分で目的地に辿り着く。そりゃそうだろう、いつもは駅から歩いて訪問しているような、つまり徒歩圏にある施設なのだから。(とはいえ花粉症シーズンなので、たとえ窓を全開にして走っても、わずか数分の屋外滞在で済むのは嬉しいことだ)
そしてCH-Rをエントランス前の駐車場に留めると、老人ホームに入って入館手続きと消毒/検温を済ませる。今回はパソコンの修理という名目で室内まで行くのだけれども、事前にスタッフ紹介済みなのでスムーズに話が進む。うん、「備えあれば、憂いなし」だ。

実家訪問

で、久しぶりにお袋さんと会って、まず一体何に困って招集されたのかを質問する。今回も予想していた通り、技術的には簡単な話だった。
実は会社でもしばらく前に問題となったけれども、MicrosoftのWindows 10大規模アップデートがった。それによって日本語の入力方法が変更され、戸惑った会社先輩は “元の操作環境に戻す” 設定を見つけ出した。お袋さんはそのMicrosoftアップデートに気づかず、「何だか変だわー」ということになった次第だった。
そこでパソコンの操作環境に変更があったことを説明し、新しい操作方法をして貰った。熱心にメモに取っていたから、かつての天気予報の確認みたいに、操作手順書は作成しなくて大丈夫だろう。これにて一見落着だ … おそらく、たぶん。
(備忘録:ツールバー右下の「あ」「A」をマウスで右クリック→設定→全般→(最下部付近の)復元を選択)

それから実家を訪問した第二の目的である、Mikanお嬢様の卒業証書や成績通知表を見せる。
「先生のハンコが難しい字だけれども、何と読むのかしら?」と、真っ先に言う。我が母親ながら、脱線の好きな人である。
しかし彼女が気にするのも、実はあながち的外れではない。通知表の表紙に手書きされているように、漢字は至って簡単なのだ。
ただし教頭先生なので、それなりのハンコを使用している。だから実印のように、読むのが難しい字体の漢字がハンコに使われているのだ。いやもしかすると、本当に実印を使っているのかもしれない。
もともと最上級生を相手にするのは骨が折れるし、進学が関係するので大変にストレスが溜まる。相手は難しいお年頃だ。おまけにこのご時世である。
だから三学期の途中で、本来の担任の先生は力を出し尽くし、お休みとなってしまった。実は我が家も少なからずご心配とご迷惑をおかけしており、全く以てして面目ない話だったりするのである。
そういうこともあって、ぼくは家族に対するアンテナ感度を上げる必要があると心を改めた。それで急にというか、今になって当ブログを開始したのだ。

幸い脱線はするものの、母親は深くは切り込んで来ない人だ。
適当に省略しながら、ハンコの主が教頭先生であることを説明する。そして続いて、ご学友との卒業写真を見せる。さらにトドメ用に印刷して持参した、小田急江ノ島線の片瀬江ノ島駅の写真も見せる。
最近は歩くのが大変になったこともあって、彼女は片瀬江ノ島駅へ行くことが出来ない。予想通り、駅舎がオリンピック開催予定時期のタイミングで改装されたことも知らなかった。

小田急江ノ島線の片瀬江ノ島駅

「随分と変になっちゃったわねえ。お母さん、昔の方が好きだわ」
そりゃそうだろう。ぼくも同感だ。というか、おそらく日本人ならば、昔の歴史を感じさせた旧駅舎の方を好むだろう。
しかしオリンピックとなると、世界中からいろんな人々がやって来る。それでプロの方々が慎重に調査/検討した末、オリンピック会場予定地の片瀬江ノ島駅を駅舎改造することになったという訳だ。
(補助金の使用とか「大人の話」もあるかもしれない。ともかく庶民にとっては、あんまり見て楽しくない新駅舎なのだ)

あとは藤沢駅は相変わらずであり、先週は久しぶりに名店ビルの「みのる」で、鰻の蒲焼を購入したことなどを報告する。
ちなみにしばらく前に小田急百貨店(2Fに江ノ電の駅があるビル)が “湘南ゲート” になったことは、今回は報告しないことにした。これは画像もちゃんと撮影してあるけれども、次の話題のネタにするつもりで隠すことにした。今回は30分程度と要望されているので、あまりのんびりしている余裕がないのだ。

オリンピックのJOC会長騒動じゃないけど、少なくとも我が母親は「話がとてつもなく長い」。ぼくも長い。弟のアルフォンス(仮名)に言わせると、「二人と見ていると、呆れるほど話が全く進まない」とのことだ。

その通りだ。素直に認めるよ、おとーとよ。

でも少し話をしただけで、随分と母親の気分転換になったようだ。最近はエントランスで見送りされることもなくなっていたが、久しぶりにエレベータのところまで見送りされた。なんでも桜も見頃だとのことで、たしかに満開のように見えた。

これは実物をお見せ出来ないのが残念だ。
桜を間近で見たことがある人はお分かりのように、あの小さな花が無数に花を咲かせている光景は、ぼくのような者でさえ感動させてくれる。
Bleachというマンガでは “千本桜” という必殺技が華麗に使われているし、あの福山雅治は “桜坂” という曲を歌う。
お花見に関しては、無数のドラマを経験して来た。

[chat face=”mikan2.jpg” name=”Mikanお嬢様” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=”maru”]いや、そこら辺は別な機会に[/chat]

今日も桜に関しては、新たなストーリーが一つ出来上がってしまったようだ。
これは別にぼくだけに限ったことではなく、スタッフの方々も同じらしい。帰りがけにCH-Rを走らせてエントランスを出ようとしたら、住民とお花見をしながら会話しているスタッフKさんと目が合った。
お互いに旧知の仲なので挨拶したけれども、スタッフもいろいろと大変みたいだ。今度来る時は、お土産の一つでも持参しようと、ふと思いついた。

[chat face=”mikan2.jpg” name=”Mikanお嬢様” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=”maru”]変なものお土産にしないように、ママに相談してね![/chat]

そんな訳で、わずか小一時間に過ぎない訪問だったけれども、それだけで本当に一話となってしまった。

終わりに

私は出不精だけれども、やっぱり外出も悪くない。どうしても家の中にいると、視野が狭くなってしまう。

横浜駅へ向かう電車の中で、おばちゃん二人が会話をしていた。最初の一瞬だけ鬱陶しいと思ったけれども、すぐに考えを改めた。
人間、いろいろと話をしたいことは山のようにあるのだ。そう考えると、ぼくは苦手であることを理由に、ママの話を聞くことを避けている。
おばちゃんたちの会話に耳を傾けながら、もっとママの話を聞く時間を作ろうと考えさせられる瞬間だった。

と、いう訳で、フランクフルト話の続編は三部作になりそうだ。申し訳ないけれども、もう少しお付き合い頂けると幸いである。

[chat face=”mikan2.jpg” name=”Mikanお嬢様” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=”maru”]スゲー、本当に作文が一本でき上がったっちゃよ![/chat]

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静 (おのせー)