海外で旅行したり生活する上で、注意した方が良いこと

辻仁成さんはフランスで生活しているけれども、僕も米国で生活していたことがある。
どんなに英語ができても、周囲にやさしい人が多くても、やっぱり異国の地で生きていくのは大変なことだ。
若くして海外生活を始めた人が、他人にも海外生活を勧めている場面に遭遇すると、ちょっと「うーん」という気持ちになってしまう。

なんでも最近、中学生くらいの米国女性2名がスタンガンでパキスタン人男性(Uber Eatsのドライバーさん)の車を取り逃げしようとしたそうだ。
現在66歳でUber Eatsをやっていて、米国へやって来たのは2014年だそうだ。
大変に残念なことなんだけれども、実は決して他人事ではないのだ。
そこで今回は米国を旅行したり生活する上で、ちょっと気をつけた方が良いことを紹介してみたい。

地域差

まず日本ほど安全な国は、世界でも滅多にない。ぼくも旅行だったら数か国を訪問したことがあるけれども、日本の脅威的な安全さを痛感する。
だって真夜中の12時であっても、こんな田舎なのに、若い女性が一人歩きしている。夜中にジョギングをしていると、そういった驚くべき光景を目にする。すごい国なのだ。
(ぼくは逆の意味で、本当は夜中にジョギングしないことが望ましい)

これ、「そんなことを言われても」と文句言われるかもしれないけど、本当にやめておいた方がいいと思う。少なくとも、服装だとか、外見から力強さが欠けていることが一目瞭然な装いにはしない方が良い。
駅から徒歩数分という当マンション前の道路でさえ、一年前にちょっとした事件があった。その時のぼくはマンション理事長だったので、捜査のためにビデオカメラの映像を提供した。
駅前には交番があっても、こんなことが起こるご時世なんだ。だから今では日本でも、あまり安全とはいえない。まさに「注意一秒、けが一生」だ。

別にぼくが広報誌を作成して、マンション内にも注意喚起する苦労をしたからといって、不満を持っているじゃない。純粋な忠告として、もっと日本人は警戒心を持った方が良いと言いたいのだ。

それから日本にしても、地域による文化差というものがある。ぼくは関東しか住んだことがないけれども、関西から来た人とは文化の違いを感じることがある。
京都に行った時などは、旅館に泊まるとモジモジしてしまう。わざわざ親切に京言葉を使ってくれるんだけれども、なんか言外に何かを暗示されているんじゃないかと心配になったりする。
そもそもぼくは身内にさえ、「皮肉の通じないヤツ」と笑われている。仕方がないとことなのかもしれない。

そして米国の場合は、スポット的に「注意した方が良い場所」というのがある。
ぼくが住んでいたのはシリコンバレーのど真ん中であるサンタクララというところだ。そこは昼間はアジア人が自転車に乗っていても全く問題ないような、安心できるところだった。
それでも最初に赴任した時に、夜の駐車場は気をつけるように釘を刺された。というか、真夜中には出歩かないようにハッキリと指導された。「ここは日本ではない」と。

そしてさらに101という無料高速道路(その辺りではフリーウェイという)では、どんなに高速道路が混雑していても、3つ隣のインターチェンジで降りたりしてはいけないとも注意された。
そこは全米でも屈指の有名スポットで、決して日本企業から派遣されているような者が行ってはならない場所なんだ。
と、いうか、ぼくが日本に帰って来た後に変化を続け、ありがたくないことに全米ナンバーワンの座を獲得してしまったと、あとから米国生活を始めた友人たちが教えてくれた。

会社からはニューヨークに行く時なんか、ジャケットやシャツの胸ポケットに10ドル紙幣を数枚入れておけとアドバイスされた。
そう。もしも危なそうな場面に遭遇した時には、それを渡して許してもらうのだ。両手の腕をラジオ体操よりも「ゆっくりと高く」上げて、指先で胸ポケットを指さすようにとのことだった。
決して間違っても、自分で紙幣を取り出そうとしてはいけないんだ。相手も生きるためにやっていることだし、そのことを承知している。だからうかつな動きをすると、連中の安全第一で大変なことになりかねない。

さらに言われたのは、「100ドル紙幣の一枚はダメ」だ。日本人には大したことない金額かもしれないけれども、ニューヨークでは大金に相当する。そもそも100ドル紙幣を使うと目立つ。
だから後で通報されたりするリスクが高くなってしまうリスクがあるので、お互いに100ドル紙幣は嬉しくないのだそうだ。
あとユダヤ系アメリカ人の上司からは、たとえ職場であっても昼寝はしないように指導された。理由を尋ねてみたら、TVドラマみたいに、「No, Explanation! This is direct order!」って言われた。

そんな強いセリフで指導を受けたのは、後にも先にも昼寝の指導の時だけだ。
もちろん上司は、イタリアでは食後に昼寝するシェスタという習慣もあるし、多くの日本人のビジネスマンが職場で昼寝することも知っていた。
「日本だったら良いけど、この米国では決して昼寝してはいけない。眠くなるならば、昼飯を食べないようにした方がと良い」とのことだった。

これが米国という国なんだ。たしかに米国人や、邦人のベテランスタッフのアドバイスはその通りだ。
たとえばニューヨークのブロードウェイを歩いている時に、若い日本人女性が二人で歩いているのを見かけたことがある。ぼくでさえ見かけた瞬間に、「カモだ!」と思った。
だって話すのに夢中で、周囲に注意を払っている様子は全くない。そしていかにも後ろから取ることが出来るような感じで、オシャレな肩掛けバックをかけている。

[chat face=”mikan2.jpg” name=”Mikanお嬢様” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=”maru”]うひゃー[/chat]

服装からして、オシャレだけれどもニューヨーカーらしくない。こんなに無防備に歩く者がいるなんて、日本人でさえ存在することが信じられなかった。
何しろ通り一本だけでも中に入ると、人影がなくなって一気に映画みたいな世界の雰囲気になって来る。
ここら辺は映画で見かける米国そのものだ。

ちなみに我が家のママは箱入り娘なので、義父から安全に関しては徹底的に指導されて来た。だから危険予知の点では安心していられる。そういう人の方が海外生活に向いていると思う。
(その割には自動車教習所での運転適正チェックでは、「我がままで自分の都合で運転するので、自動車の運転はオススメしません」だったけど…)

[chat face=”woman1″ name=”ママ” align=”left” border=”gray” bg=”none” style=”maru”]余計なことは書かなくてよろしい[/chat]

そういえばハワイで道に迷って住宅街に入り込んでしまった時には、少しでも早く大通りに出ようと言われた。その通りだ。ぼくたちみたいな数年しか米国で生活経験を持たない者は、いわゆる「少しだけ高級な住宅街」という身分相応のところだけで生活した方が良い。
間違っても生活費を節約しようとして、安いところ選んではいけない。

ぼくは米国では独身生活を謳歌していたので、少しリーズナルブルなワンルーム・アパート(米国ではマンションは「戸建ての邸宅」を意味する)に住んでいた。
会社の後輩は現地スタッフから勧められたアパートを選んだけれども、ぼくでも一目でわかるほど、住民の生活レベルが全く違いましたな。
ぼくのところなんかは異文化豊かなところで、深夜に部屋の窓を開けてお祈りをする隣人なんかもいた。近所迷惑とか、そんな概念がない国から来ていたらしい。

つまり通り一本を間違えて走っただけで、一気に用心した方が良くなる。米国というのは、そんな国なんだ。
今回は「パキスタン人」と説明されているけど、冒頭説明のように、2014年にパキスタンからやって来た人だ。年齢も66歳だ。そんな人がワシントンなどで、地図を見ながら走るようなことをやってはいけない。

そもそも米国のビザを取れる者って、学生や高度技能者(ワタクシ、いちおうIT技術者のハシクレだす)になっているハズだ。米国人の職を奪うことなく、米国の役に立つと判断されるからビザが発給される訳なんだ。
Uber Eatsの配達をやっていたそうだけど、ビザで米国に滞在している者は、普通は許可されていないハズだ。米国を取得した子供がいるからビザ取得できたとか、そういう理由かもしれない。
だってUber Eatsにせよ、米国人の仕事を奪うことになってしまう。あ、でもカルフォルニア州はアルバイトでさえなくて、業務の外注になるからオッケーに法律が返られたんだっけ。ワシントンも同じかもしれない。
いずれにしても、「パキスタン人がUber Eatsの配達員をやっている」と聞いた時点で、米国生活の経験者なら、いきなりアンテナが立ってしまう訳なんだ。

米国の市民権を持ったら「日本人」でなくて「日系アメリカ人」→「米国人」という表現にる。”Japanese American” と “Japanese” は全く違う存在なのだ。
たとえば日本はフランスや中国に対しては輸出管理が徹底されていて、技術情報の提供であっても社内審査をちゃんとやる必要がある。これはたとえ米国で生活していも同じで、中国系 ”アメリカ人” ならば技術的に自由に話をすることが出来る。
この輸出管理は「知りませんでした」では済まされない。問答無用で前科者になってしまう。大企業だからって、裁判所は容赦しない。
そして中国人留学生とか、ビザで米国生活をしている中国人と接する時には技術的な話をすることは注意することが必要になる訳だ。

日本に住んでいると分からないけれども、「xx人」と相手に確認するというのは、米国では最初にやるべきことなんだ。

言語や文化の壁

それから当たり前だけれども、米国は日本じゃない。だから先ほどみたいな「Direct Order!」のニュアンスは最低限の常識だ。
ずっと昔、気の毒なことに「フリーズ!」という単語や使い方を知らなくて、ハロウィンの時に亡くなった日本人留学生がいた。
これは日本では騒ぎになったけれども、米国では「大変に気の毒だけど、仕方ないだろう」っていう感じだった。何しろTVドラマを観ていれば分かるけど、「絶対に動くな。瞬き一つしてはダメだ! これ以上少しでも何かしたら、全力で叩きのめす」という一般用語だ。
それを知らずに、のこのこと相手のいる玄関の方に歩いて行ったら、トラブルになるのは米国人ならば自明のことなのだ。

あと恥ずかしい体験談だけれども、ぼくはスピード違反によって裁判所で罰金を払ったことがある。
ぼくが住んでいたシリコンバレー(おそらく全米全て)では、小学校などの近くでは絶対に法定速度を超えてはいけない。たとえ数キロでもオーバーすると、すぐにパトカーがやって来て、切符を切られることになる。

こういった日本とは違った文化というものが、米国にはある。「日本だったら全く問題ないし、全く危険はないだろう」なんて予想は通用しない。
米国人としては、絶対に曲げられないルールなのだ。日本ではない。郷に入っては郷に従うしかないのである。

あと米国は右側通行の国で、どんな時でも右折はオッケーという道路も多い。そういう訳だからなのか知らないけれども、治安の良くないところでは、交差点で車を止まるのは望ましくない。
交差点は狙い目のスポットであって、これも現地スタッフからは、くれぐれも気を付けるようにと教育された。だから米国生活が始まったばかりの頃は、クルクルと右回り「走り回る」ことが多かった。

しめくくり

長いことニュースを観ていると分かると思うけれども、米国でトラブルに巻き込まれる日本の会社員は少ない。人数でいうと、米国にいる多くは日本人会社員やその家族だ。それでもニュースにならないのは、邦人のベテランスタッフや現地スタッフから教育を受けているからなのだ。

若くて数年しか米国に住んだ経験しか持っていないと、こういった辺りの事情は分からない。
そもそも英語力でいえば、TOEICなんて990点満点を持っていても、細かい会話をするのは大変だ。ちなみにTOEICは英語の基礎力を測定するツールなので、スコア950以下だと留学さえ難しい。その基礎力の上で、現地の言い回しや文化の違いを身に付ける必要ある訳だ。それが法人の現地スタッフだ。
だから米国育ちでないと、米国のことは分かりにくい。いやたとえ米国生まれだって、わかるのは住んでいる近所のことだけだ。お上りさんは、どこの国でもお上りさんなのである。

ちょっと長くなってしまったけれども、これで米国で生活するってことが、少しでも分かって貰えたら嬉しい。日本人は日本で暮らすのが、一番安全で快適なのだ。

しかし今はグローバル時代だ。
Mikanお嬢様の学校では、女性が何名も海外大学に入学している。ぼくの元同僚も、英国ウィンチェスター大学の卒業生だ。
だから少し長くなってしまったけれども、米国を目指す必要のある人も多いだろうと思って、今回の記事を書いてみた。少しでも誰かのお役に立つことが出来たら、ぼくとしては大変に嬉しい。

そして辻仁成さんの滞仏日記は、ぼくから見ると海外生活ノウハウの塊だったりもする。だから読んで楽しいとか、皆を元気にする以外にも、海外生活をする者は拝読して損することは絶対ない。
そして「やっぱり辻仁成さんはすごいなあ」、と、あらためて実感させられてしまうのだった。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成: 小野谷静 (おのたにせい)