クロスの高級ボールペンをジェットストリーム化できた理由

クロスボールペンでジェットストリーム

今回はクロスのクラシックセンチュリーで、三菱鉛筆の低粘度インクであるジェットストーム替え芯を利用可能にした顛末記だ。

先の記事で形見ボールペンをジェットストリーム化した方法を紹介したけれども、本当の事を白状すると、前日譚があったりする。
義父の誕生日に投稿しようと思っていたけれども、せっかくなので連投することにする。(実際に挑戦してみる人には、何となく当記事の方が具体的内容で役立ちそうな気がする)

実は前記事のジェットストリーム化への挑戦前にも、そこそこ試行錯誤をしていたりする。思いつきのアイディアだけれども、こういった単純なことにしても検証データの積み重ねが必要となることがある。
(「ムズカシイ言い方をする」と、ですな。冷静に見直すと、「単なる間抜け」に過ぎないようにも見える… 気のせい、気のせい)

三本の矢

「三本の矢」は、戦国大名だった毛利元就の名言である。三匹の子豚とは少し違う。
ともかく白状してしまうと、ぼくはクロスのクラシックセンチュリーを三本ほど所有していた時期がある。

最初は先ほど紹介したブログ投稿記事の通り、親父さんから譲られた一本だ。
クラシック・センチュリーは画像の通りで、鉛筆のように細いボールペンだ。しかし基本的な書き心地は悪くない。何より顧客先を訪問することがあるビジネスマンにとっては、Yシャツの胸ポケットに入れても型崩れすることがない。

その軽さに助けられた一本だった。

しかし… ある時、何かがキッカケとなって、本体軸の後ろ半分がどこかへ雲隠れしてしまった。もちろん理論的には後ろ半分がなくても替え芯を出し入れ可能だけれども、明らかに見た目が変だ。Yシャツに留めるクリップもない。

さいわいクロスでも初心者向けで手頃な価格だったので、生まれて始めて「高級ボールペン」なるものを、自腹で購入した。それも新品だ。(当時はチョットだけドキドキした)

で、良くあることだけれども、「購入した直後に失くし物が見つかる」というパターンを体験することになった。
つまりお約束通り、無事に後ろ半分も見つかって、ぼくはクラシックセンチュリーという高級ボールペンを二本も所有することになった。

で、普通の人ならば、ここで話は終わりとなる。しかしぼくの場合には、いつものように続編が製作される事態が生じた。義父が無くなったのだけれども、彼もクロスのクラシックセンチュリーを所有していたのである。
と、いうか、彼はいろんな高級ボールペンや万年筆を所有していた。
特に万年筆に関しては、ちょっとしたコレクター並みだ。このことを生前に知っていれば、アレコレと一層会話が白熱したように思う。少しだけ… 少しだけ残念だ。

ともかくそんな訳で、ぼくの手元には三本の矢ではなくて、三本のクロームが集結することになった。
さすがに1本目と3本目は、ちょっと恐れ多い。しかし2本目は自分で購入したものであり、好き勝手に “遊ぶ” ことが出来る。
その自分が購入した二本目を、人柱として使ってみることにした訳である。はい。

ちなみに1本目のボールペンは、親父さんの遺品が欲しいと従弟に相談されて、半年くらい前に譲ってしまった。また二本目に関しては、ブログ記事を読んで下さった方からクラシックセンチュリーでジェットストリームを試してみたいとご相談を頂いた。
そこで次のようにペン先を改造した二本目のペン先を “謎クラシックセンチュリー” に装着し、その謎クラシックセンチュリーのペン先をスターリングシルバー(99.25%が銀)に装着して、数か月前にお譲りしてしまった。

スターリングシルバー本体軸は相当な年代物だったけれども、わざわざ御礼を頂戴してしまった。これなら気軽に記念品に利用できるクロームで譲ってしまった方が良かったかもしれないと反省している。
(いくらクラシックセンチュリー・シリーズで最高ランクのスターリング・シルバーといっても、1,000円くらいで入手した中古品だったのだ。それをわざわざ御礼を頂戴するほど使いやすいと喜ばれてしまった。ちょっとドキドキしてしまう心境ですな)

初体験

さてクロームというモデルが三本も揃ってしまった時期に、ペン先の軸穴を拡張するというアイディアを思いついた。で、まずはシャープペンシルの芯のように細いダイヤモンド・ヤスリを購入して、軸穴の拡張を試してみた。

残念ながらヤスリが細過ぎて、軸穴を上手に削ることは無理だった。実際に試してみて、初めてそのことが分かった。

そこで先の記事で紹介したように、三菱鉛筆のジェットストリームに4c芯が登場したことを知り、試みに替え芯の外周をヤスリで削って、その替え芯をクローム高級ボールペンに装着してみた。
こちらは「この実験は成功」といった感じで、替え芯の外周は容易に加工する(削る)ことができた。しかしさらに短時間で容易に替え芯を使いたいという思いは強まり、やっぱり軸穴を拡張してみたい気持ちに傾いてしまった。
モノ好きだと笑われてしまうけれども、ぼくはこうなるとカッパえびせんのように「やめられない、止まらない」というタイプの生き物だ。
と、いうか、こうやって突っ走って人柱になるのが、ぼくの存在意義なのかもしれない。

ともかく今度は本気だ。
画像のように細長い円錐形のダイヤモンド・ヤスリを使って、ボールペンのペン先の軸穴を拡張してみた。

でも… やっぱり未知な世界に足を踏み入れる時は、ぼくといえども臆病になるものだ。随分とお安い「本気」もあったものだ。(えっ、誰が脇目もふらずにイノシシみたいに突進して自滅することが殆どだって?)
それはともかく最初にクロームで挑戦する時は、ダイヤモンド・ヤスリの方向を逆向きにして試してみた。だって、何も見えない内側からだと、どのくらい削れば良いか見当がつかない。その点、外側から出来るだけ軸穴を拡張すれば、削れ具合を目視できるし、作業も効率化できる。
(分からない人は、図を描いて考えてみよう)

で、幸いにして外側からのアプローチは、ペン先の軸穴のフチが「あと少しで無くなる」というところまで細くなった時に、無事にジェットストリーム替え芯を通過させることが出来るようになった。

そうなのだ。実は最初に挑戦した時は、「まず外側から軸穴を拡張してみる」というアプローチだったのだ。いい加減者にしても、ちゃんとこのような試作段階が存在したのである。
そしてこの時の加工作業を通じて、相当というか壮絶にしんどい反面、内部側からでも十分にイケそうな手ごたえを掴んだ。それで謎クラシック・センチュリーのペン先などは、殆ど内側から軸穴を拡張する方式を採用している。(外側から削るのは、気持ち程度)

ともかくこういった幾つかのノウハウ蓄積を通じて、冒頭画像のように通るようになるくらいまで軸穴を拡張すれば、ジェットストリーム替え芯が通過できるようになるということが分かった。

ここまで来れば、最初にペン先に通してみた時の装着状況を通して、どのくらいの難易度であるのかを推測できる。それで全てのクロスで大丈夫そうなことが分かり、調子に乗って、片っ端からジェットストリーム化を「やってしまった」という訳だ。

ちなみに感想としては、新しいモデルほど大変になりつつあるような気がないでもない。最近のモデルであるアベンチュラの時なんて、心が折れそうになってしまった。いや、マジな話で。

(「ペン先が超合金Zなんじゃないか?」と半ば本気で疑ったほどだ。さすがはクロスというところだろうか)

まとめ

以上の通りで、実はアレコレと試行錯誤して経験を積んだ後、親父さんの形見ボールペンを加工している。だからボールペンがダメになってしまうという事態は、心配する必要が全く無かった。

またこの記事を親父が読んだら本気で呆れたと思うけれども、もう彼はこの世にはいない。だから安心して、どれだけ貴重な時間を費やしてしまったかを、ここで明らかにしても大丈夫という訳である。

(彼さえ読まなければ、ノウハウとしては貴重なものであり、公開するだけの価値はあると思う… おそらく、たぶん)

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成: 小野谷静 (おのたにせい)