新学期と親父から貰ったクロス互換替え芯のボールペン

新学期が始まると、新しい手帳や筆記具の出番となる。新しい学校への提出書類で、久しぶりに油性ボールペンの出番となる。

(さすがに万年筆で提出書類を書く勇気は、ぼくにはない)

ところで辻仁成さんだけれども、イチローが打席でバットを回してから構えるのと同じように、トイレでメンタルを整えるのをルーチンにしているそうだ。

そしてぼくの場合は、何かあった時には親父さんから譲られたボールペンを使うことにしている。今は亡き父親のイメージが伴っているので、下手な精神安定剤よりも効き目がある。

ただし “親父ボールペン” はクロスの純正芯が本来のスタイルだけれども、ぼくの場合は三菱鉛筆のジェットストリームという低粘度インクの替え芯を装着している。

別に学校書類などや書類へのサインの時に、メンタルを整える必要はない。それよりもいざという時には、やっぱり細かい文字を書けるジェットストリームで、チマチマと考えをまとめることが役立つのだ。

そんな訳で今回は、クロスの純正芯が使える親父ボールペンと、ジェットストリーム替え芯の装着方法を紹介させて頂くことにする。

親父からのボールペン

まあ正直に事実を語ると、親父さんから譲られたというよりも、親父さんから奪ったというのが正しいかもしれない。何しろ言い出したのは、コチラ側だ。

当時のぼくは文房具のブログ記事をメインに執筆していて、ネタとして筆記具を探し求めていた。で、親父さんに、不要になった筆記具がないかと尋ねた訳だ。そしたら彼が譲ってくれたのが、クロスの純正芯を使えるボールペンだ。
先ほどから微妙な表現になっているけど、本当に “クロスの純正芯を使えるボールペン” とか表現できない。クロスのボールペンであるかどうかは、実のところ分からない。「謎のボールペン」と言い換えても良い。

これは親父さんが何かの記念パーティーに出席した時に、記念品として配られたものだそうだ。クロスの純正芯が装着可能なものの、ぼくが見たことがないモデルのボールペン本体軸だ。おまけに分解してみても、どこにもCrossのロゴがない。
そもそも画像の通りで、クロス特有のデザインであるコニカルトップが付いていない。検索エンジンで調べまくったけれども、こんなモデルは全く見当たらない。

実はクラシックセンチュリー、センチュリーII、タウンゼント、ATX、アポジー、アベンチュラなど、主要なクロスのモデルが手元にある。ぼくはいわゆるコレクターというヤツなのだ。
そのようなぼくでさえ、まったく見たことがないモデルだ。ただしペン先部分がATXと共通なので、どうやらクロスのボールペンか、クロスのボールペンを製造委託された企業が商品化したボールペンである可能性が高い。本体内部の回転機構も、見た目はクロスそのものである。

まあクロスであるかどうかは、別に深く考える必要はないだろう。だってそもそも、どこにもCrossとは書いていないだから。とりあえず、クロスの純正芯が利用できるという事実だけで十分だ。
なおこのボールペンは、先ほどの説明通りで、決して無理して譲って貰ったという訳ではない。

まず最初に尋ねた時に、即答された。まくしたてるようで、ぼくが滅多に耳にしないない口調だった。
「高級ボールペンはあるが、替え芯を買う必要があるぞ。いいか、クロスの替え芯だ! 繰り返しておくが、クロスの替え芯だ!」

御存じない方のために説明しておくと、実はクロスのボールペン本体軸は大したことない価格だったりする。コレクター向け記念モデルを除けば、クロス最高峰に位置付けられるタウンゼントだって1万円以下で購入可能なショップもある。
それよりボールペン替え芯が、良いお値段なのだ。米国であればAmazonが2本セットなどを販売しており、それなりの価格では入手できる。しかし日本では、そういったセット商品が存在しない。
普通のサラリーマンの昼飯代よりも高くつく。そんな飛んでもない替え芯が、クロスでは採用されているのだ。

だから親父さんがボールペン替え芯に拘ったのも、無理からぬ話なのだ。
ともかくまずはボールペンを貰って、一緒に食事をしている時にも言われた。
「なあ、静。あのボールペンは記念品として貰ったからという訳ではないが、クロスの替え芯が必要だぞ。本当にそれで構わないのか?」

親父さんの心配は、もっともなことだ。
ぼくは悲しいことに、平凡で薄給の元技術者サラリーマンに過ぎない。
彼もブロガーだったけれども、「書くこと(だけ)に意義がある」という不思議なブロガーだった。
英語も勉強する行為に意義を見出しており、テストなどで英語力を測定することには興味を持たなかった。息子がTOEICスコア950という留学生レベルの得点を叩き出した時も、「ふーん」の一言で終わってしまった。
似たもの親子だと言われたし、見た目がソックリであったことは認めるけれども、このあたりは随分と違っているらしい。

ともかく息子のことは、本気で心配していたらしい。
実家を立ち去る時にも、念押しをされた。
「すまんなあ。クロスの替え芯が必要なボールペンしか持っていなくて … それでは困るだろう」

たしかに彼はクロスのボールペンというか、クロスの純正芯には相当詳しい。
何しろぼくがクロスのボールペンを使っているのは、親父譲りのことだったりする。
彼はクシックセンチュリーのクロームという初心者向けボールペンを、ぼくに譲ってくれたことがあるのだ。
米国の国際会議に出席した際は、現地でクロスの替え芯が安く買えないかと、現地を散策してみたことがあったとのことだ。
子供の頃に覗いた彼の引き出しには、クロスの互換芯が数本あった。
だから親父横たわっている。

しかし子供は、いつまでも子供のままではない。
実は腹案があって、ぼくはいそいそと嬉しく「謎のクロスのようなボールペン」を譲って貰ったのだ。
それが次に紹介する、「三菱鉛筆のジェットストリーム替え芯」の装着大作戦である。

ジェットストリーム装着

さてクロスのボールペン替え芯(リフィル)は、事務用ボールペンの替え芯のように細長い。利用可能かもしれないと期待する人も多いだろう。

しかし残念ながら、文房具屋や書店で購入できるレベルの事務用ボールペンの替え芯は、クロスのボールペンには装着できない。先ほど少し言及した「ペン先部分の金具」の軸穴が細過ぎるのだ。

これは大いに納得できることだったりする。会社員というビジネスパーソンの立場から見ると、クロスのボールペン本体軸はお手頃な価格レンジが多い。つまりクロスとしてはボールペン本体軸はアチコチにバラ撒いてしまい、替え芯で売上や利益を得ようとしている訳だ。

ほいほいと簡単に事務用ボールペンの替え芯が利用できたら、こまった事態になりかねない。

コピー機がコピー機の本体ではなくて、トナーで売上や利益を得るようなものだ。事務用ボールペンと同じ価格とは言わないけれども、モンブランやファーバーカステルのような超高級ブランドよりも格安価格だといえる。

ちなみにモンブランの替え芯も同様に高価格なことで有名だけれども、あちらは “ジャイアントリフィル” とさえ呼ばれる大型ボールペン替え芯だ。つまり一本当たりのインク容量が多いので、滅多に交換する必要はない。それだけ長期間に渡ってチップ(ボール)やインクが使用できる訳で、見事な職人技だ。そして滅多に交換する必要がないので、替え芯をカバンに入れて持ち歩くとか、予備ボールペンを持ち歩く必要もない。

ただし見事な職人技は、ビジネス的には Good! と言えないこともある。たとえ「ソニー・タイマー」と呼ばれ、一年で使えなくなってしまっても、ビジネス的には都合良かったりすることがある。

だからクロスのペン先部分の細さは、徹底している。そして互換芯を試してみたことがあるけれども、品質というか “書き味” が全く勝負にならない。

2000年頃のクロスの替え芯だと、書く時の筆記確度によっては “ダマ” と呼ばれるインクの塊が生じることもあった。最近はそういったこともなくなり、モンブランのジャイアント・リフィル並みに高品質となっている。さいわい米国では流通網が発達しているから、数本まとめたセット替え芯でコスト節約を図ることができる。

ところがリフィルは日本国内では生産されていないためか、セット替え芯が販売されていない。1本ずつ替え芯を購入する必要があり、親父やぼくのようなヘビー・ユーザーには困った事態となってしまう。実は最初のうちは、泣きながら三菱鉛筆ジェットストリームの4c替え芯を、ダイヤモンド・ヤスリで削って装着していた。

そう、冗談じゃなくて、本当に替え芯の金属部分をヤスリで削って、ペン先金具の無事に通過するまで細く削ったのだ。人間の指先感覚というのは大したもので、適当に外周全体を削ってみたら、無事にジェットストリームを装着できるようになった。
だから親父と違って、ぼくは少しだけ強気に出ることが出来た訳だ。そしてこのことがキッカケとなって、高級ボールペンの替え芯という世界にハマってしまった。

クロスボールペンのジェットストリーム化

だから実家を訪問した時に、余っているボールペンがないかと尋ねた訳である。勝算のない戦いを挑んでいた訳ではない。
長年の付き合いだけれども、親父さんには息子の馬鹿さ加減が想像できなかった訳である。
(たしかに普通の親だったら、わざわざボールペン替え芯をヤスリで削る子供を授かったとは想像したくないかもしれない)

しかし当ブログで記事にするには訳があって、ぼくの馬鹿さ加減は、さらに斜め上を行ってしまった。
何が言いたいかというと、今ではヤスリなんか使わなくても、普通にジェットストリームのプラスチック替え芯をボールペンに装着できている。

これもまた考えてみれば当たり前の話で、ペン先部分の穴をダイヤモンド・ヤスリで拡張工事してしまった訳である。力技による正攻法だ。
第二次世界大戦でデパートの入口をドイツ軍に爆撃されたイギリス人が、「本日より入口を拡張しました!」って貼り紙を出すようなものだ。
(さすがにこの喩えは、少し苦しいかな…)

ともかく、たとえカテナチオと呼ばれる難攻不落の要塞であっても、やる気があれば大抵は何とかなる。今回はそのやる気を出して、ひたすらペン先の穴に棒ヤスリを当てて、くるくると回し続けたという訳だ。
さすがにATXと同じペン先だけあって、謎のボールペンのペン先も手強かった。しかし三十分ほどテレビを観ながら回し続けたら、とうとうジェットストリーム替え芯を、そのまま通過させることが出来るようになった。

父親から心配しながら譲られた油性ボールペンを、さらに大変な労力を費やした末に、低粘度インクのジェットストリームで快適に使えるようにしてしまった訳である。ちなみに画像に目を凝らすと分かるかもしれないけれども、現時点では特殊形状の0.28mm径のジェットストリームEdge替え芯を装着している。

もちろん「大は小を兼ねる」で、相変わらずクロスの純正芯も利用可能だ。ただしクロスの純正芯を使う場合には、当然ながら替え芯の先端にセロテープなどを少し巻き付けて、外径を少し水増しする必要がある。
(逆に言えば、それだけで昔通りに純正芯も利用可能という訳だ)

しめくくり

そんな訳で、ぼくの手元には親父から譲られたボールペンがある。
形見である上に、親の心配を何とかして克服し、快適に利用できるようにしてしまった形見の一品だ。
本当に困った時には、このボールペンで何か書きながら、気持ちを落ち着けるのが「ぼくのルーチンワーク」となっている。

さすがに紛失したくないので、親父が亡くなってからは、持ち歩く機会が減っている。
そういうこともあって、いつも胸ポケットに控えているのは、相変わらず1989年生まれの西ドイツ製モンブラン・マイスターシュテュックだったりする。
(それとBicの四色ボールペンとか)

最近では書いて気持ちをコントロールするのが流行しているらしいけど、ぼくとしては大いに納得できるアプローチだ。
もちろん他人に勧めてみたい気持ちはあるけれども、やっぱり三十分というのは貴重な時間である。
そんなこともあって、自慢はするけれども、ちょっと他人にはオススメしかねる方法だったりする。

ただしここでようやくタイトルと結びつくけれども、もしあなたがの記念品を新入学生や新会社員にプレゼントする立場だったら、クロスとか他メーカーの高級ボールペンも面白いかもしれない。
(クロスが替え芯使い終わるとお蔵入りとなるのは、定番的な話だし)

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静 (おのたにせい)