使いやすいボールペンのオススメと見つけ方

「小野谷さんほど筆記具に詳しければ、オススメのボールペンも沢山ありそうですね」と、かつて言われたことがある。その時の僕は、ローマの休日みたいに、「あれも良いし、これも良い」といった返事をした。

文房具に詳しい人ならば、分かってくれるだろう。

たしかに筆記具に関しては、そこらの文房具店で働ける程度の知識はある。クロス、モンブラン、ファーガーカステル、カランダッシュ、LAMYをはじめ、カルティエやダンヒルまでカバーしている。

しかし… 自分が知っているというのと、人にオススメできるというのは次元の異なった話なのだ。そもそも文房具マニアというのは、アレコレと手を出し続けているから文房具のことに詳しい。
「僕なんてコレだけですよ、コレだけ」という訳ではないのだ。

それに誰かにオススメするためには、その誰かのことを理解している必要がある。どうして筆記具を使うのか、どのように筆記具を持っているのか、その筆記具で書き込む紙の性質はどのようなものか… などなど。

だから使いやすいボールペンを見つけたければ、勉強熱心な文房具店のスタッフに相談してみるのが良いというのが、今の僕の持論だ。スタッフや文房具の知識や仕入れ/販売といった店舗運営だけなく、アドバイザーとしてのスキルも磨いている。
この相手の悩みを理解して改善策を提案するアドバイス… コンサルタント能力が、僕たち文房具マニアには欠けているのだ。

それから無責任な言い方になるけれども、使い手の体調などによっても “文房具の最適解” というのは変わって来る。だから文房具店のスタッフがどんなに素晴らしいアドバイスをしても、それが明日も通用するという保証はない。

例えば僕は一か月くらい前に中指の爪あたりの部分が不調となった。その時に最も役立った筆記具は、クロスのタウンゼントというローラーボールペンだった。

ただしそのタウンゼント、そのままでは使えなかった。なんとバンドエイドを巻き付けることによって、最も使いやすいボールペンとなった。
(最初は指側にバンドエイドを巻いてみたけど、巻いたままでは皮膚感覚がおかしくなってしまった)

もちろんタウンゼントにバンドエイドを巻いたままでは、キャップをつけることが出来ない。それでクロスのエッジからエックスを通って、ピアレス125へ到達したという訳だ。

恐ろしいことにモンブランのマイスターシュテュックでお蔵入りしていたダイヤモンド・エディションにも、バンドエイドを巻いてみた。ホワイトスターの代わりにダイヤモンドが使われているけれども、そんなオシャレなボールペンにバンドエイドが巻かれている… モンブランのファンが知ったら卒倒してしまうかもしれない。

それからもう一つ僕からアドバイスできることと言えば、先ほどのバンドエイドみたいに「使いやすいように自分で工夫してみる」ということだ。人間が無理にボールペンに合わせるのではなく、ボールペン側に人間向けサービス提供を頑張って貰うのだ。

例えばほぼ日手帳にも使用されたことのある三菱ジェットストリーム3色ボールペンとか、4+1といった多色ボールペンはビジネスパーソン向きではない。なぜならワイシャツの胸ポケットに仕舞おうとしても、グリップを確実にするためのゴム部分が邪魔をするのだ。

そうすると看護師などが使用しているフランスのBic多色ボールペンが活躍することになるが、あれは昔の油性インクを想定している。その書き心地に感動したこともあるが、低粘度インクのジェットストリームには向いていない。やっぱり三菱鉛筆ジェットストリーム用の多色ボールペン軸は、三菱製が似合っている。

そこでワイシャツに収納できないという欠点を補うべく、ゴム部分にマスキングテープを巻いてしまうのだ。この方がBic多色ボールペンにジェットストリーム替芯を装着するよりも、使い心地が良い。

そういえばタウンゼントのローラーボールに装着する替芯だけれども、これもクロスのピアレスみたいに鉛シートを巻くと使い心地を調整できる。中指の調子が良くなかった時には必要なかったし、今ではピアレスをメインで使うようになっているけれども、機会があったら試してみても良いかもしれない。

クロスのピアレス125を「最高に使いやすいボールペン」にする方法

そうやって工夫することにより、ボールペンを使う満足度はアップして、仕事の効率もアップする。あまり凝り過ぎると時間をムダにすることになってしまうが、こういった「自分でも工夫してみる」というマインドは、今の時代には似合っているかもしれない。

これはイチゴジャムを塗ったトーストに、トマトを細かく切った破片を載せたオリジナル料理だ。今まではピンクグレープフルーツを使っていたけれども、買いに行くのが面倒なのでトマトで代用してみたら、グレープフルーツ並みに満足できる美味しさだった。

この「ちょっとした一手間」というのは、これからも僕的には大切にしていきたいと思っている。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静